Mono Interference Cancellation(MIC)は、大都市などの人口密集地域でのセルラー・ネットワーク容量を最大40%高めるSingle Antenna Interference Cancellation(SAIC)のフィリップス版実装です。この技術は、欧州のVodafoneや米国のCingular Wirelessなど、世界中の大手通信事業者の関心を呼びました。この技術は、最大の干渉要因となっている基地局からの信号をキャンセルしながら、主要基地局からの信号を処理します。
SAICの起源
たとえば、GPRSのユーザーなら、ビット・レートのスループットが上下に変動するような経験をしたことがあるでしょう。これは、同じ周波数レンジで動作している同じエリア内の他の基地局からの干渉によるものです。この干渉を最小限に抑えるため、SAICは受信した信号をフィルターに通し、その強さを分析してそれぞれの信号を認識して、最も大きな干渉を発生させている信号をキャンセルします。SAICは、共存チャネルでの干渉を防止するだけではなく、隣接する周波数チャネルの帯域重複に起因する、隣接チャネル間の干渉も防止できます。SAICにより、携帯電話でのキャリアと干渉の比率を大幅に改善することができ、データ・レートを高め、通話切れを抑えて、音質を改善することができます。SAIC対応の携帯電話を推進することにより、通信事業者はより多くの加入者を同時にネットワーク接続させて、サービス品質を高めることができます。
3Gインフラストラクチャの投資収益はやっと回収が始まったばかりであり、世界中の通信事業者は、GTSMネットワーク・インフラストラクチャ性能を改善するための手段を模索しています。SAICは携帯電話のソフトウェアでのみ実装すればよく、ネットワーク容量を30~50%も改善する可能性を秘めています。この数値を達成するためには、同一セル内のすべての携帯電話にSAICを搭載する必要がありますが、少数の携帯電話のみにSAICが搭載されているだけでも、ネットワーク効率はかなり改善されます。
セルラー・システムでの干渉
SAICは、低コスト・ソフトウェア・ソリューションを携帯電話のデジタル信号プロセッサ(DSP)に組み込むことにより、最新型の統合アンテナおよびRF回路を利用するという、実用的なアドバンテージをもたらします。携帯電話のDSPに組み込まれた新しいアルゴリズムにより、無線周波数(RF)帯域を最大限に効率よく活用できるようになります。
GSM標準では、セルラー・システムで多くの通話をサポートするため、周波数分割多重アクセス(Frequency-Division Multiple Access: FDMA)に時分割多重アクセス(Time-Division Multiple Access: TDMA)を組み合わせることで、1つのMHz帯域と8つのタイムスロットごとに5つの通信チャネルを提供しています。より多くのネットワークで採用されるようになっている1:1の周波数再利用方式では、ネットワークでのすべてのセルが、空いている周波数チャネルで送信を行うことができます。
ただし、基地局からの信号は簡単にセルの境界を越えてしまい、共存チャネル干渉を引き起こすため、干渉の制御は容易ではありません。干渉は、1つのセル内の携帯電話が、同じTDMAタイムスロット内の同じチャネルで通信を行っている隣接セルから(別の携帯電話向けの)信号を受信してしまう場合に発生します。この干渉信号の強さがローカル信号と同じくらいの強さである場合には、携帯電話の音質が低下し、通話切れとなることもあります。
セルの配置や無線波伝搬に対する地勢の影響は不規則であるため、共存チャネル干渉は、あらゆるGSMネットワークの大部分に影響する可能性を持っており、非常に高いレベルの干渉を引き起こすこともあります。また、この干渉は、周波数が他の複数のセルで隔てられているセルで再利用されただけでも発生することがあります。したがって、共存チャネル干渉は、原理的には大半のネットワークに影響し、ネットワーク容量を最大限に広げるために周波数を再利用しなければならない通信事業者にとっては、大きな課題となります。
GSMのDARP標準
3GPPが行ったSAICの実用性の研究では、あらゆるネットワーク・シナリオにおけるSAICの利点が実証されています。さらに、3GPPは、GSM標準に干渉キャンセル要件を追加することで、SAICの標準化を完了し、対応するテスト・ケースを併せてDownlink Advanced Receiver Performance(DARP)としてまとめました。
数々の賞を獲得した実装
フィリップスのSAIC実装はMICと呼ばれ、初の実装として市場をリードしています。フィリップスのNexperiaセルラー・システム・ソリューションで実装されているMICは、世界中の通信事業者や携帯電話メーカーによって試験が行われており、量産市場への投入準備が整っています。この技術の重要性を裏付ける事実として、MICを開発した企業は、VodafoneのStiftung fur Forschungから賞を授与されています。
SAIC/MICは、利用可能な帯域幅をより効率よく活用し、利用ホットスポットの容量を高めるための手段を提供し、ネットワーク性能を高めるための重要なツールの1つとなります。SAIC対応携帯電話が増えれば、通信事業者は、サービス品質を高め、通常の周波数再利用による区分の一部として、ネットワーク・エリアを拡大することができます。
さらなる改善の研究
最近、GERAN標準化団体において、平均効率、データ・レート、カバレージ、およびレイテンシについて既存のGSM/EDGEネットワークをさらに改善できる技術を発掘して投資するための実用性研究が実施されました。SAICの成功に触発され、その後継となる受信多様性を備えた携帯電話用の技術が標準化されようとしています。デュアル・アンテナ干渉キャンセル(Dual Antenna Interference Cancellation: DAIC)は、携帯電話の2つの異なる受信アンテナからのRF信号をジョイント処理することによって干渉を防止します。DAICは、SAICがGSMで実現したのと同じレベルの干渉抑制をEDGEで実現し、GSMの耐干渉性を高めると共に、両システムの適用範囲を広げる副作用も備えています。
